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忖度の恐怖

 忖度(そんたく):他人の気持ちをおしはかること。推察。 「相手の心中を-する」
  このところニュースで頻繁に使われる言葉です。辞書的な意味である「他人の気持ちをおしはかること」自体は非難されることではないという印象を受けるかもしれません。しかし、今の日本で進行している事態に対して、私は恐怖感を覚えます。

 国民の税金や国有財産の管理に関して、著しく不合理な対応をした公務員は、権力者の意向を忖度したと受けとめられる行動だったが故に、その責任を問われずに守られています。権力者の意向を結果的に忖度せずに発言した籠池氏は、偽証罪に問われる可能性のある証人喚問の席に座らされました。

  権力者が明言しなくても、その「心中を察して」行動すること、そうした態度を周囲に強いているのが安倍政権だと思います。安倍首相本人としては、自分が指示した覚えはないのだから自分には責任はないと考えているのかもしれません。もしそうだったとしても、言わなくても忖度で動く状態がつくられていることに、強い恐怖を感じます。

 さらに恐ろしいことは、ジャーナリストの中にも権力者の心中を忖度する言動が見られることです。戦前の軍部は徹底した言論弾圧を行い、国民に正しい情報が伝わらなかったとされています。悲惨な戦争に突き進んだ要因として、そうした言論弾圧が語られています。しかし、軍部の言論弾圧の前に軍部の意向を忖度する報道姿勢がありました。軍部に対する批判を避けて、権力におもねる報道をした新聞がありました。今ネットでは、御用ジャーナリストという言葉を目にします。そう呼ばれる当人たちはどのように感じているのでしょうか。

  東芝の不正経理、三菱自動車の燃費データの不正、タカタのエアバックの欠陥隠し、大企業で不正が次々と明るみに出ています。そのたびにコンプライアンス(法令遵守)という言葉を耳にします。こうした不正を担当者が法令を遵守しなかったという良心の問題としてかたづけられるでしょうか。経営者が不正を命令したのならば、経営責任だけではなく刑事責任を問われるべきです。しかし、不正の問題の根は深く、企業の不正は繰り返されています。

  こうした問題の根っこの部分には忖度があると考えています。社長が不正を指示しなかったとしても、社長の「心中を察して」行動する姿勢を多くの社員に植え付けているからこそ生まれてくる不祥事なのではないでしょうか。忖度による不正の土壌ができていた会社は、結果的にその会社の存続が危うい状態にまで追い込まれてしまっています。

  それと同じように、官僚組織やメディア企業が忖度によって生じた不正を忖度によってうやむやにしてしまおうとする事態を見ていると、日本の将来を危ぶむという意味で、私は恐怖を覚えるのです。

by take-marupon | 2017-03-28 10:02 | 政治とジャーナリズム