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『コペンハーゲン 首相の決断』

  デンマーク初の女性首相を主人公にしたテレビドラマの紹介です。制作されたデンマーク国内だけでなく、イギリスやフランスで爆発的な人気を獲得して、世界70カ国で放映されているそうです。日本では現在、CSのドラマ専門チャンネルで第2シーズンが放送されています。タイトルは日本でのいわゆる邦題です。

  作品の評価を高めているのは脚本の秀逸さだと思います。ドラマの設定ではリベラルな立場の4つの政党の連立で、かろうじて過半数を確保できるという状態です。保守的な立場の野党との緊迫した政治的駆け引きが物語の縦糸となります。政権を維持するために、時には自分の主義主張とは異なる選択を迫られます。

  例えば、財政再建と福祉施策の維持を両立させる事を目指した法案を成立させるたに保守党に譲歩したことで連立に亀裂が入ったりします。その法案の名前は「私たちの未来」、単に法案を可決させればよいのではなく、法案が目指す社会体制を長く維持するためには幅広い支持が必要だと考えて辛い決断をします。政治家がどういう思いを持ってどういう動き方をするのか、それをジャーナリストたちがどう伝えるのか、政治の課程がリアルに描かれます。

  そうした政治の動きの一方で、主人公は首相としての激務から家庭を顧みる余裕がなくなり離婚に至ります。母としての悩みなど、登場人物の気持ちが丁寧に描写されていて、ヒューマンドラマとしても見応えがあります。首相を支える報道担当補佐官とジャーナリストとの駆け引きや恋愛もドラマに幅を持たせています。

  このドラマがデンマークで放送された後、デンマークで実際に女性首相が誕生しました。ドラマの中ではイラク戦争や移民の問題、環境税の問題など同時代の政治問題や社会問題がリアルに描かれています。デンマークでの実際の政治の動きについては知識がないのですが、現在進行形の政治問題をドラマに取り上げることは簡単なことではないように思います。その点でも脚本の力が光ります。

  今はまだ出ていないようなのですが、いずれレンタルのDVDで見ることができるようになると思います。そして、良質な大人のドラマを日本でも制作されることを期待しています。

by take-marupon | 2015-03-10 22:20 | 映画・ドラマ・音楽