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クリエイティブな仕事

 あるOBが仕事のやりがいについて、次のような話をしてくれました。

 学生時代にコンビニのアルバイトをしていた時には、例えば6時に仕事が終わる日なら、3時ころから「あと3時間か、2時間になったな、まだ1時間あるよ」というように、早く仕事が終わらないかなという気持ちで時間ばかり気にしていた。けれども今の仕事は、きがつくと「あれ、もう11時か、そろそろ切り上げないと終電になっちゃう」という感じで時間が経つのを忘れてしまう。

 彼がやっていた仕事は、テレビ番組の編集です。どの映像をどうつなぐのか、このカットを何秒使うのか、どうすれば視聴者を惹きつけられるのか、映像編集の仕事は凝り出すと、つなぎ直し、つなぎ直しの作業を繰り返して、時間がどんどん過ぎていきます。好きなことをやっている時には、時間が過ぎるのが早いですよね。好きな仕事ならば、時間を費やすことはさほど苦にならないと言えます。

 彼が番組制作会社に入社した時に、社長から「これから、あなたの職業は何ですかと聞かれたら、アーティストと答えなさい」と言われたそうです。テレビ番組の編集はクリエイティブな仕事であり、その仕事に就いていることを誇りに思いなさい。社長はそう言いたかったのだろうと思います。

 「事務の仕事や営業の仕事には魅力を感じない。できればクリエイティブな仕事に就きたい」と思っている人は一定程度いると思います。そうした思いを持っている人に、まず考えて欲しいことは、仕事に費やす時間についてです。会社員として働く場合、基本的には所定の勤務時間があります。しかし、クリエイティブな仕事の場合、所定の勤務時間できっちり仕事が終わる状態を期待することは困難です。上司から早く帰れと言われても、自分の気持ちとしてなかなか帰れない状態になりがちなのです。

 画家や音楽家のような芸術家を目指す人は、たいていの場合、芸大や音大に進学するでしょう。そうした職業に就くには自分の技量を高めるために長い修行が必要だという認識は共有されています。さらに小説家として会社に雇われて職業にしているという立場も想像しにくいですよね。芸術家、アーティストと呼ばれる職業の人の場合、フリーランスの立場で働くことが普通です。

 学生が思い描くクリエイティブな仕事は、会社員として雇われて安定した立場を確保しながら、他の人とは違うやりがいのある仕事ができる職業という意味合いがあると思います。しかし、安定した会社員の身分で、時間管理が難しいクリエイティブな仕事に携わり、ワークライフバランスのとれた生活を送るというのは、とても恵まれた立場だと言えます。そう簡単には手に入らないでしょう。新入社員に対して「職業はアーティスト」と答えなさいと言った社長の言葉には、会社員とアーティストは両立しないものであり、アーティストであるという気構えを持てという意味もあったのかもしれません。

by take-marupon | 2019-02-10 14:18 | キャリアデザイン