演習の進め方はこれまで試行錯誤を重ねてきました。ここ数年は、前期は本を読んでその感想を一人一人がプレゼンすることを核にしています。この形式は、卒業後にどんな仕事に就くにせよ求められる「社会人基礎力」を養うことを目的としています。考え抜く力、前に踏み出す力、チームで働く力の3つが、社会人基礎力として整理されています。
「耳学問」という言葉があります。授業は教員の話を聞くことが基本です。話を聞いて理解するわけですが、聞くだけでわかったように思っても、実はよく理解していないことがしばしばあります。本を読むことで理解は深まります。でも、そこで得たはずの知識を誰かに伝えようとすると、うまく伝えられずに困惑することがあります。人に伝えるためには、しっかりと理解する必要があるのです。本を読んで、その本から得られた知見を人に伝える行為は、必然的に深く考えることにつながります。
聞くことは受動的な行為です。伝えることは能動的な行為です。毎回とにかく発言する機会を持つこと、誰かに伝えるために自分の考えをまとめる作業は、前に踏み出す姿勢を必要とします。自分の周りの人に、自分の考えをわかってもらうためのコミュニケーションの経験を積み重ねることは、チームで働く力につながります。
先日、ゼミのOGから次のような内容のメールを受け取りました。
昨日、部内全体でのプレゼン会がありました。「事例共有」という名目でしたが、私などの新入社員にはまだ共有できる経験がないためテーマの枠がフリーで苦労しましたが、なんと部長や課長を始め同じ部の先輩方から一番良い発表だった!と褒めていただけました。先輩方が驚いていて、その状況に私の方がびっくりしてしまいました!(笑)これはもう絶対に中瀬ゼミで培った力だなと実感する日々です。
実際に社会に出てから必要とされる社会人基礎力は、大学の勉強を通じて身につけることができるのです。演習やゼミの活動内容は、その考えをもとに企画・運営しています。そのことを理解して欲しいと思っています。